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2025.08.08

情シス業務を効率化する方法「一人情シス・IT何でも屋から脱却」できるようにするには

 

情シス(情報システム部)は「一人情シス・兼業情シス」や「IT何でも屋」として、1人もしくは少数の担当者が過剰な量の業務をこなしがちです。業務効率化による上記のような状況からの脱却は、リスク回避と会社の利益の向上のために必要だといえます。具体的な効率化の方法として、情報の整理や自動化などが挙げられます。

ここでは、情シスの業務効率化の必要性とその方法を基本から解説します。社内向けのIT業務の負担を減らし、会社の未来に投資するための第一歩を踏み出しましょう。

情シスとは?役割と実情

 

情シス(情報システム部)が具体的にどのような役割を担い、特に中小企業ではどのような課題を抱えているのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。この章では、まず情シスの基本的な役割から、多くの中小企業が直面する「一人情シス」問題、そして「IT何でも屋」になりがちな実情までを、分かりやすく解説します。

情シスの役割・業務

情シス(情報システム部)は、企業活動に不可欠なIT関連の業務を幅広く担当する部署あるいは担当です。業務を行うためのパソコンやサーバー本体と中身にあたるシステムの運用・管理・保守を担い、ときには社内のメンバーから寄せられるトラブルの相談にも対応しています。

インフラ運用・保守(守りのIT)

社内のITインフラが常に安定して動くように管理する、事業継続の根幹を支える重要な役割です。ネットワークやサーバー、業務システムなどが止まらないように見守り、万が一の事態に備えます。

    • 社内ネットワークやサーバーの構築・運用・保守
    • 基幹システムや業務アプリケーションの安定稼働
    • データのバックアップ・復旧

セキュリティ対策

会社には「製品・サービスに活用する企業独自の技術」や「顧客情報」などの大切な資産があり、これら形をもたない資産を外部に漏らさないよう守るのも情シスの役割です。上記のようなセキュリティ対策には、システム上の対策だけでなく、人(従業員)の意識向上も含まれます。

    • セキュリティポリシーの策定と周知
    • 情報セキュリティ教育の企画と実行
    • ウイルス対策、不正アクセス監視
    • セキュリティインシデント発生時の対応

IT資産管理

パソコンやスマートフォン本体、これらの中に含まれるシステム・データなどは広く「IT資産」と呼ばれ、これらを管理するのも情シスの仕事です。セキュリティ対策と連動しており、決算業務に必要となることもあります。

    • PC、スマートフォン、サーバー等のハードウェア管理
    • ソフトウェアライセンスの購入・棚卸し・管理
    • 各種IT関連サービスのアカウント管理

ヘルプデスク・サポート

情シスでは、社員がITツールやシステムをスムーズに利用できるようサポートする業務も行います。PCのトラブル対応や操作方法の案内などを通じて、社員の仕事を支えています。

    • 社員からのITに関する問い合わせ対応(パスワード忘れ、操作方法など)
    • PCのセットアップ(キッティング)やトラブルシューティング
    • FAQやマニュアルの作成・更新

戦略・企画(攻めのIT)

情シスの役割は、すでにあるITシステムの運用や保守などに留まらず、システムの発展につながる業務に及んでいます。企業のIT化が進むと、業務の効率化を通じ、経営目標の達成や会社の競争力強化にも貢献します。

    • IT戦略を立て、実行する
    • デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める
    • 新しいシステムの導入を企画し、詳細な検討を行う
    • 企業のIT関連予算の策定し、承認された予算を管理する

中小企業で起こりがちな「一人情シス」や「兼任情シス」とは

中小企業では、社内のIT関連業務をたった一人の担当者が担う「一人情シス」の体制が慢性化しがちです。ワンオペで業務を担う情シス担当者は、総務や経理などほかの業務と兼任していることもあります。

背景にあるのは、IT人材の深刻な不足や、会社の予算不足などです。

情シス業務でよくある悩み

 

情シスは日々の業務の中で多くの課題に直面しており、とくに一人情シスの体制では問題が深刻化しがちです。ここでは、経営者や情シス担当者本人が抱えがちな悩みを考えてみましょう。

問い合わせとトラブル対応で一日が終わる

情シス担当者のもとには「インターネットに繋がらない」「パスワードを忘れてしまった」「Excelの使い方が分からない」などの社内相談がひっきりなしに寄せられがちです。担当者は自身が進めている業務を都度中断しなければならず、社内相談の対応で一日が終わることが頻発します。

上記のように、情シス担当者が社内の相談とトラブルの対応に追われる状況が続くと、システムの保守やセキュリティ対策などの大切な業務がどんどん後回しになります。このような状況は、システム停止や情報漏洩などといった重大なインシデントの原因になるでしょう。

担当者が短期間いなくなっただけで業務が止まる

一人情シスや兼任情シス体制では、情シス担当者が1日から数日程度だけ欠勤する場合でも、業務システムの停止などの企業活動に関わるトラブルに見舞われがちです。業務に必要な情報や知識を情シス担当者が独占しており、別の社員が引き継いで穴を埋めることが難しくなっているのが原因です。

また、1人もしくは少数で情シスを担う担当者は、慢性的にオーバーワークとなりがちであるため、休職や退職でいなくなる可能性が大きいといえます。万一、情シス担当者が長期間いなくなる事態が発生すると、システムの更新や監視が行われないことでセキュリティが弱くなり、ハッキング被害による情報漏洩といった重大なインシデントが起きることもあります。

なぜ今、情シスの業務効率化が重要なのか?

情シスの業務効率化は、直接的には担当者の負担を減らす効果をもたらします。間接的には、会社が大切な資産を守りながら止まらずに成長を続けるための要となるでしょう。

収益を生む業務の生産性を向上させる

情シス業務の効率化は、会社の収入に直接つながる業務の効率を向上させる効果があります。

日々の問い合わせ対応といった重要でない仕事(ノンコア業務)から情シス担当者が解放されると、システムの運用・管理といった重要な業務に集中することができます。情シスとして期待される本来の役割がスムーズにこなせることで、会社の収入に直接つながる業務(コア業務)を行う部署の仕事も円滑に進みます。兼業情シスの体制なら、情シス担当自身のリソースもコア業務のため確保できるようになるでしょう。

上記のような変化は、情シスがコストセンター(費用を消費する部門)からプロフィットセンター(利益を生み出す部門)へと進化する第一歩となります。

知識の共有でセキュリティリスクを低減する

業務効率化の過程で知識を共有していくと、会社の守りが固くなり、セキュリティに関するリスクを大幅に減らせます。

マニュアルの作成や対応履歴の共有は、特定の担当者しか業務を把握していない「属人化」を防ぎます。担当者が不在でも他の人が対応できるため、サイバー攻撃などの緊急時にも手順に沿った素早い初期対応が可能となり、被害を最小限に抑えることにつながるでしょう。

また、FAQやマニュアルを整備する過程は、社員一人ひとりがITへの理解を深める良い機会です。会社に「まず自分で調べる」という文化が根付けば、社員のITリテラシーが向上します。結果として、会社全体がフィッシング詐欺などの脅威に強くなり、より安全な事業環境を築くことにつながります。

攻めの戦略を立てて企業の成長を加速させる

業務効率化によって生まれた時間や人的なリソースは、会社の成長を加速させるための原動力となります。

日々のシステム運用や保守といった「守りのIT」は、事業を維持するために不可欠です。しかし、会社の成長には、新しい価値を生み出す「攻めのIT」への取り組みが欠かせません。業務効率化は、この「攻めのIT」に注力するための時間と余裕を生み出します。

具体的な「攻めのIT」とは、ITを活用したコスト削減の実行や、データを分析して新たなビジネスモデルを提案することなどを指します。このような経営視点での貢献は、市場の変化に素早く対応できる強い企業体質を作り、競争力を高めることにつながるのです。

情シス業務を効率化する具体的なステップ(初級編)

情シスが抱える悩みを解決し、本来の業務に集中するためには、何から手をつければよいのでしょうか。ここで紹介する方法は、特別なツールや大きな予算がなくてもすぐに実行できます。

問い合わせを減らす第一歩!FAQとマニュアルを作成する

情シスへの問い合わせを減らす最も効果的な方法は、社員が自分で問題を解決できる環境を整えることです。その第一歩が、FAQとマニュアルの作成です。

■FAQ(よくある質問)の整備

……まずは普段からよく寄せられる質問をリストアップし、その回答と共に一覧にまとめましょう。その内容は「Wi-Fiのパスワードは?」「プリンターの接続方法は?」といった簡単なもので構いません。これらを社内ポータルサイトや共有フォルダなど、全社員がいつでもアクセスできる場所に公開します。

■業務マニュアルの作成

……PCの初期設定方法や、全社で利用しているソフトウェアの基本的な使い方などを、画像やスクリーンショットを交えて分かりやすく文書化します。文書化した情報があれば、新入社員の入社時や担当者が不在時でも各自で作業を進められるようになります。

■自己解決を促す文化の醸成

……情シス担当者のヘルプデスク業務を減らすうえで「何か困ったら、まずFAQやマニュアルを見る」という文化を社内に根付かせることが大切です。問い合わせの際に「その内容はマニュアルの〇ページに書いてありますよ」と案内することで、少しずつ自己解決の習慣が浸透していきます。

業務の全体像を把握し、タスクを可視化する

日々の業務に追われていると、自分が今何をすべきか、何が後回しになっているかが見えなくなりがちです。そこで、一度立ち止まって業務全体を整理し、可視化することが重要です。

■業務の棚卸し

……まずは、情シスが現在抱えている業務をリストアップしましょう。リストの内容は「会社の成長に直結するコア業務」と、「日々の運用保守などのノンコア業務」に分類します。これにより、自分が何に時間を使うべきか、何を効率化すべきかが明確になります。

■業務範囲の明確化

……情シスが対応すべき業務の範囲を明確に定義し、それを全社に周知します。例えば、「システムの障害対応は情シス、ソフトウェアの応用的な使い方は各部署」といったように線引きをすることで、「IT何でも屋」状態から脱却し、不要な問い合わせを減らすことができます。

■タスク管理ツールの活用

……情シス業務の抜け漏れや対応の重複を防ぐためには、タスク管理ツールの活用が有効です。専用ツールでなくても、共有のスプレッドシートなどで「担当者」「期限」「進捗状況」を一覧にするだけで、誰が何をすべきかが一目で分かり、計画的に業務を進められます。

社内で使うITツールやソフトウェアを統一する

部署ごと、あるいは個人ごとにバラバラのツールを使っている状況は、管理の手間を増やし、セキュリティリスクを高める原因です。社内で使用するツールを統一することで、業務を大幅に簡素化できます。

■ツールの標準化

……チャットツールやファイル共有サービス、Web会議システムなどを全社で一つに標準化します。これにより、情シスが管理すべきツールが減り、問い合わせの内容も限定されるため、対応が楽になります。

■シャドーITの防止

……会社が許可していないツールを社員が個人的に利用することを「シャドーIT」と呼びます。これは、情報漏洩などの重大なセキュリティリスクに繋がる恐れがあります。利用ツールを標準化してルールを明確にすることで、こうしたシャドーITの利用を防ぎます。

■ライセンス管理の効率化

……利用するソフトウェアを統一すれば、ライセンスの管理も効率的になります。必要なライセンス数を正確に把握できるため、無駄なコストを削減できるほか、ライセンス違反のリスクも回避できます。

チャットツールなどを活用し、連絡手段を一本化する

電話やメール、あるいは直接の口頭など、問い合わせの窓口が複数あると、対応が煩雑になり、履歴も残りません。連絡手段をビジネスチャットなどに一本化しましょう。

■問い合わせ窓口の集約

……情シスへの問い合わせは、特定のチャットツールの一つの窓口に集約するルールを設けます。これにより、問い合わせの見落としを防ぎ、対応の優先順位も付けやすくなります。

■対応履歴の可視化

……チャットツールでのやり取りは、すべて記録として残ります。過去のトラブル内容や解決策を後から簡単に検索できるため、同じ問題が発生した際にすぐに対応できます。この履歴そのものが、生きたナレッジベースとなるのです。

さらに効果を高める!情シス業務の効率化(中級・上級編)

 

FAQやマニュアル作成といった初級編のステップで問い合わせを減らせたら、次はいよいよITツールや外部サービスを活用して、より本格的な業務効率化を目指しましょう。ここでは、情シス業務の質をさらに高め、担当者が本来のコア業務に集中できる環境を作るための、中級・上級編の具体的なステップを4つ紹介します。

クラウドサービスを導入する

クラウドサービスとは、インターネット経由で利用できるソフトウェアやシステムのことです。自社でサーバーなどの物理的な機器を持たずに済むため、情シスの業務を劇的に効率化できます。

クラウドサービス導入のメリットを整理すると、次のようになります。

■管理工数の削減

……最大のメリットは、システムを管理する手間を大幅に削減できる点です。クラウドサービスなら、障害発生時の対応からOSやソフトウェアのアップデートまで、すべてサービス提供側(ベンダー)が責任を持って行ってくれます。情シス担当者は、面倒なサーバー管理から解放されるのです。

■コスト削減と柔軟性

……自社で物理的なサーバーを持つ必要がなくなるため、高額なハードウェアの購入費用や、サーバーを設置するデータセンターの維持コスト、電気代などを削減できます。また、クラウドサービスは利用した分だけ料金を支払うプランが多いため、事業の成長に合わせて柔軟に規模を拡大・縮小できるのも魅力です。

■場所を選ばない働き方へのシフト

……インターネット環境さえあれば、オフィスだけでなく自宅や外出先など、どこからでもシステムにアクセスできます。こうしたしくみがあれば、多様な働き方を推進するテレワークにもスムーズに対応可能です。

PCやソフトウェアの情報を一元管理する

社内にあるPC、サーバー、ネットワーク機器、さらにはソフトウェアのライセンスといった情報を1つの画面でまとめて管理すれば、IT資産の情報を整理するためあちこち探し回る手間が省けます。そのほかにも、情シス業務のミスを防ぎ、会社の情報を守るうえで、次のようなメリットがあります。

■資産情報の正確な把握

……ツールを使えば、誰がどのPCを利用しているか、どのソフトウェアがインストールされているかといった情報を常に最新の状態で把握できます。部署異動や退職に伴うPCの再割り当てや、ソフトウェアライセンスの過不足管理も容易になり、無駄なコストの発生を防ぎます。

■セキュリティ強化

……IT資産管理ツールは、セキュリティ対策としても強力な味方です。たとえば、会社が許可していないソフトウェア(シャドーIT)のインストールを検知したり、OSやソフトウェアのアップデートが適用されていない危険なPCを洗い出したりすることができます

定型業務はRPAで自動化する

決まったことを繰り返すだけの定型業務は、RPA(Robotic Process Automation)というツールで自動化を検討しましょう。RPAとは「PC上で行う作業を代行してくれるソフトウェアのロボット」です。あらかじめ作業の手順を登録しておけば、24時間365日、正確に業務をこなし続けてくれます。

ここで、RPAに行わせることのできる業務の例をいくつか挙げてみましょう。

    • 新入社員が入社した際のアカウント発行作業
    • 毎日のデータのバックアップ
    • 定期的なレポート作成

RPAにはヒューマンエラーを防止する効果もあります。人が手作業で行う以上どうしても起こる入力ミス・作業漏れといった問題は、RPAがルール通りに寸分違わず作業を実行する場合には心配無用です。

アウトソーシング(外部委託)を検討する

情シス担当者の業務を減らすためのアクションが難しい、そもそも人材がいない……といった問題は、業務の一部を外部の専門企業に任せるアウトソーシング(外部委託)で解決できます。

アウトソーシングできる情シス業務の例をここで挙げてみましょう。

■ヘルプデスク業務

……社員からの「PCが動かない」「パスワードを忘れた」などの相談の一次対応を任せることで、情シス担当者は本来の業務に集中できます。

■PCのキッティング(初期設定)

……新入社員の入社時やPCの入れ替え時に発生する、大量のPCセットアップ作業を委託します。時期によって業務量が大きく変動する作業を外部に任せることで、社内のリソースを安定させられます。

■システムの監視・保守

……24時間365日、専門家がサーバーやネットワークの状態を監視します。異常を検知した際には迅速に対応してくれるため、一人情シスでは難しい夜間や休日の安定稼働も実現可能です。

■セキュリティ運用

……高度な専門知識が必要なセキュリティ対策の運用を専門企業に委託します。最新の脅威への対応やインシデント分析など、プロの知見を活用して会社の守りを固めます。

情シス業務について外部の力を借りることで、社内に多くの好循環が生まれます。最大のメリットは、情シス担当者が日々のノンコア業務から解放され、IT戦略の立案といった「攻めのIT」に集中できる環境が整うことです。会社の成長に直結する、より付加価値の高い仕事に取り組めるようになる点です。

ほかにも、アウトソーシングには次のようなメリットがあります。

    • 情シス担当者の休暇・休職・退職によるリスクを回避できる
    • ITの専門家の知識や経験、最新のトレンドを自社に取り込める
    • IT人材の採用コスト(採用予算と採用担当者のリソース)をかけずに済む

情シス業務の効率化で会社の未来に投資を

情シスの業務効率化は、単に担当者の負担を減らすためだけのものではありません。ノンコア業務から解放された情シスが、セキュリティ強化やIT戦略の立案といった「攻めのIT」に注力することは、会社全体の生産性を高め、未来の成長を支える重要な投資です。

最初は「FAQの作成」や「業務の可視化」といった、すぐに始められる方法から試してみましょう。もし「社内のリソースだけでは限界がある」「何から手をつければ良いか分からない」といった悩みがあれば、専門家の力を借りるアウトソーシングも良い方法です。

タスネットでは、お客様の状況に合わせた柔軟なITサポートサービスを提供しています。情シス業務に関するお悩みは、ぜひ一度私たちにご相談ください。

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タスネットITサポート

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