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2025.11.18
ライセンス管理とは?デジタル環境のコスト最適化に効く実務の基本
現代の企業活動では、オフィスソフトや会計ソフトなどの使用許諾契約(ライセンス)が欠かせません。問題は、契約するライセンスのうち不要なもの・古いものが放置されることで、無駄な経費やセキュリティリスクが生じてしまう可能性があることです。
企業の予算を無駄なく配分し、IT周りを最新の状態に保ってセキュリティを強化するうえで、ソフトウェアの利用および契約状況のチェック・改善を実施するための「ライセンス管理」は欠かせません。
ここでは、ライセンス管理の目的や効果を解説したうえで、具体的にどう始めるのか解説します。
ライセンス管理とは?なぜ必要なのか
ライセンス管理とは、企業が使用するソフトウェアの使用権を適切に管理する取り組みです。具体的には、
- オフィスソフト
- 会計ソフト
- ファイル管理ソフト
- そのほかの業務支援ツール
- BIツール
などの契約状況を管理し、契約プランを変える・不要な契約は解約するなどといった対応をスムーズに行えるようにすることで、コスト削減やセキュリティ対策の強化につなげられます。
ライセンス管理を必要とする理由
ライセンス管理が必要とされる理由は、
- コストの最適化(経費の無駄をなくす)
- セキュリティ対策(常に最新のソフトウェアを利用する)
- 法令遵守、コンプライアンス維持(権利侵害を回避する)
上記の3つです。
ライセンス管理を適切に行うことで得られる最大のメリットは「必要な分だけ契約する」ことで、無駄なライセンス料の支出をカットできることです。最低限、必要な使用許諾の種類および数を常にチェックできていれば、余剰ライセンスを見つけしだい解約して、予算配分を随時見直せます。
余剰ライセンスが見える化され、きちんと解約されることは、セキュリティ対策の向上につながります。古いライセンスがなくなることで、セキュリティホールが塞がれていない低いバージョンのソフトウェアが使用される可能性がなくなるからです。
業務や取引に影響のある「著作権侵害」や「ソフトウェア利用規約違反」を回避するうえでも、ライセンス管理は重要です。ソフトウェア提供元が認める使用の範囲、使用方法の種類について最新のルールが確認できていれば、それを社内に周知し守らせることができるのです。
IT担当が行うライセンス管理業務の内容
ライセンス管理の業務は、大きく分けて「把握」「記録」「運用」の3つに分類されます。規模が拡大するまでのあいだは運用に気をとられがちですが、把握・記録のプロセスも経費の最適化やセキュリティ対策の面で重要です。
■ライセンスの「把握」とは ……ソフトウェアの購入本数と実際の使用状況を正確に把握する
■ライセンスの「記録」とは ……ライセンスキーやプロダクトキーを安全に管理し、紛失や漏洩を防ぐ
■ライセンスの「運用」とは ……新規従業員の入社時にライセンスを適切に付与し、退職者からは速やかに回収するしくみを整備する
ライセンス管理とアカウント管理の違い
ライセンス管理とアカウント管理は、いずれも企業のIT環境を適切に運用するために必要な取り組みですが、管理対象が異なります。
管理対象の違いを簡単にいえば、
- ライセンス管理:使用許諾契約の種類、数、内容、割当先
- アカウント管理:実際に使用するためのログイン情報
上記のとおりです。
ライセンス管理では「どのライセンスを何本購入し、それをどのパソコンやユーザーに割り当てているか」を把握します。仮にオフィスソフトの使用許諾契約を20台分締結した場合、
- その契約でどんな機能を利用できるのか
- 使用中のパソコンの台数(あるいはユーザー数)はいくつか
を把握、記録、運用するのがライセンス管理業務となります。
一方、アカウント管理は「誰がどのサービスを使えるか」という権限の管理です。上の例でいえば、
- パソコンまたはユーザーごとに発行するログイン情報
- 各ログイン情報に付与されているアクセス権限
これらをモニタリングし運用するのがアカウント管理業務です。ここでのログイン情報は、ユーザーID(ログインID)とパスワードを指します。
ライセンス管理の基本的な進め方
ライセンス管理は、いくつかのステップを踏んで段階的に進めることで、無理なく確実に体制を整えられます。最初から完璧を目指す必要はなく、まずは現状を把握し、少しずつ管理の仕組みを作っていくことが大切です。ここでは、中小企業でも実践できる4つのステップを紹介します。
ステップ1:まずは現状を大まかに確認する
ライセンス管理の第一歩は、社内で利用されるソフトウェアやサービスの現状を大まかに把握するごとです。部署ごと、プロジェクトチームごと、各業務の担当者ごとにヒアリングを行い、まずは下記の情報を掴みましょう。
- 業務で使用しているソフトウェア、サービスは何か
- 利用する従業員および機器の数はどのくらいか
- 使用許諾契約はいつ、誰が締結したのか
これらの情報は、記録・運用すべき使用許諾契約の全体像に「あたり」をつけるのに役立ちます。とくに、利用するソフトウェア・サービスおよび使用権が多岐に渡り、さまざまな部署やチームに存在する会社では、こうした大まかな把握が必要です。
ステップ2:管理台帳を作成する
ライセンスの現状把握ができたら、詳しく聞き取りを行い、管理台帳を作成しましょう。
管理台帳は「ソフトウェア管理台帳」と「ライセンス管理台帳」の2つに分けることで、前者ではソフトウェアの利用に関する状況を、後者では使用許諾契約の期間などに関する状況を整理できます。
ソフトウェア管理台帳には、次の情報を記録しましょう。何を・どこで・誰が・どのような契約種別で利用しているのか記録することで、最新の利用状況と情報共有を行うべき担当者を一望できるようになります。
- ソフトウェア名
- エディション、バージョン
- ベンダー名
- インストールするコンピュータの名称
- 使用する部署・チーム
- 使用する部署・チームの責任者
- 契約種別(有償か無償か)
ライセンス管理台帳には、上記のうちソフトウェア名からベンダー名までの基本的な情報に加え、下記のような契約とライセンス使用状況について記載します。
これらの情報があることで、契約更新の失敗や余剰ライセンスに前もって対処する準備が整います。
- 契約開始日
- 次回の契約更新日
- ライセンス種別・形態※
- 使用許諾証明の保管場所
- 保有数、割当数、残数
※買い切り型、サブスクリプション型など
ステップ3:記録・運用ルールを整備する
ソフトウェアおよびライセンス管理台帳ができたら、台帳の更新ルールに加え、保有ライセンスの運用のルールを決めて社内に周知します。
台帳の更新ルールは、1か月ごとに更新日を決めて対応するものとしましょう。使用するライセンスのほとんどを1年更新としている場合でも、最初に1か月程度の短い試用期間があり、その間に契約更新するか判断しなければならない種類のものがあるからです。
重要なのは、ライセンスの購入や回収のルールです。情報共有がスムーズに行われ、余剰ライセンスが発生しないよう、次のようなルールを定めるべきです。
ライセンス購入時の申請フローを策定する
……各部署が勝手にソフトウェアを購入するのではなく、必ず管理部門(総務やIT担当者など)に申請し、承認を得てから購入するしくみを作ります。このフローがあることで、保有ライセンスの最新の状況を把握しつつ、重複購入や無駄な契約を防げます。
ライセンス付与・回収の流れと回収担当者を決める
……従業員の入社・退社時、どのソフトウェアのライセンスを付与または回収するのか、誰がその手続きを行うのかを決めておきましょう。各契約の変更と業務開始をスムーズにするだけでなく、ライセンス付与・回収のタイミングで自然に最新バージョンの有無を確認できるようになるメリットがあります。
ステップ4:定期的に見直し、最適化する
ライセンス管理は、一度体制を作って終わりではありません。定期的な見直しと最適化を繰り返すことで、より効率的な運用が可能になります。
具体的には、年次または半期ごとに「棚卸し」を実施し、管理台帳の情報と実際の使用状況が一致しているかを確認しましょう。この際、各部署にアンケートを取ったり、実際にパソコンおよびソフトウェアの利用状況を確認したりすることで、正確な実態を把握できます。
こうした見直しでは、最終的に次のような対応を取ることになります。
- ソフトウェアをバージョンアップする
- ライセンスの契約プランを変更する
- 契約の自動更新を停止する
- より便利なソフトウェア・サービスに乗り換える
ライセンス管理で押さえておきたいポイント

円滑なライセンス管理のポイントは、
- ライセンス形態の種類の理解
- 最も重要な「更新時期」の把握
- 引き継ぎや分業が容易にする管理ルールの策定
です。具体的には、次のようにいえます。
まずはライセンス形態の種類を押さえる
ライセンス管理の主な目的は「コストの最適化」です。いつ・いくらで更新されるのか知るため、ライセンス形態の理解は欠かせません。
ライセンス形態の代表的な種類には、下記のようなものがあります。
永続ライセンス(買い切り型)
……一度購入すれば追加費用なしで永続的に使用できる形態です。初期費用はまとまった金額になりますが、長期間使用する予定であれば、トータルコストは抑えられる可能性があります。ただし、購入したバージョンから新しいバージョンへのアップグレードには、別途費用が必要です。
サブスクリプション型ライセンス
……月額または年額で利用料を支払う形態です。初期費用を抑えられる点が魅力で、常に最新バージョンが使える、サポートが含まれているといったメリットがあります。一方で、使い続ける限り料金が発生し続けるため、長期的に見るとコストが高くなる場合もあるでしょう。
ボリュームライセンス
……大量導入を前提に割引が受けられる形態です。企業向けに提供されており、社員数が多い場合や複数の部署で同じソフトウェアを使用する場合に適しています。管理も一元化しやすく、ライセンスキーの管理が簡素化されるメリットがあります。
ユーザーライセンス
……特定の人が複数のデバイスでソフトウェアを使用できるライセンスです。一人の社員が会社のパソコンと自宅のパソコンの両方で使いたい場合に向いています。
デバイスライセンス
……特定のパソコンに対してライセンスが付与され、そのパソコンであれば誰でも使用できる形態です。共有パソコンや交代制の勤務形態に適しています。
更新時期を見逃さないしくみを作る
ライセンスの有効期限切れによる業務停止を防ぐには、更新時期を確実に把握し、対応する仕組みを整えることが欠かせません。具体的な方法として、下記のようなものが考えられます。
- ライセンスごとに年間スケジュール表を作成する
- 複数人での通知を共有して更新漏れのリスクを分散させる
- 重要なライセンスのみ契約の自動更新を設定しておく
管理ルールを統一的かつ簡易にする
ライセンス管理を続けて行ううえで、現場で実際に運用できるシンプルなルール設定は重要です。
たとえば「ライセンス購入時には5つの部署の承認を得て、10項目の情報を記入し、3種類の書類を添付する」といった煩雑なルールを作っても、現場では守られず、結局は管理が崩れてしまいます。
よりシンプルなルールの例として、
- 「ソフトウェアを購入する際は、まず総務部に相談する」
- 「退職者が出たら、その日のうちに管理台帳から削除する」
といったものが考えられます。
管理台帳の記入項目も「必要最小限にとどめる」を意識しましょう。あれもこれもと情報を詰め込むと、記入する側の負担が大きくなり、更新が滞る原因になります。
最初は基本的な項目(ソフトウェア名、ライセンス数、使用者、有効期限など)だけに絞り、運用しながら必要に応じて追加していくやり方も良いでしょう。
ライセンス管理を効率化する方法

ライセンス管理は、手作業で行おうとすると膨大な時間と労力がかかります。しかし、適切なツールやしくみを取り入れることで、負担を大幅に軽減しながら正確な管理が可能になります。
ここでは、中小企業が段階的に取り組める効率化の方法を紹介します。
表計算ソフトの活用から始める
ライセンス管理を始めたばかりの時期は、ExcelやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトを活用すると良いでしょう。ほとんどの場合はすでにメインの業務で導入しており、操作に熟練する人員の確保も容易だと考えられます。
インターネット上には、ライセンス管理用のテンプレートが無料で公開されています。これらをダウンロードして必要な情報を入力するだけで、簡単に管理台帳を作成できます。自社の運用に合わせてカスタマイズも容易なため、柔軟な管理が可能です。
ライセンス管理ツールを活用する
ライセンス数が増えてきたときや、管理の精度を高めたい場合は、専用のライセンス管理ツールの活用が効果的です。
専用ツールを使う最大のメリットは、社内のパソコンにインストールされているソフトウェアを自動で検出する機能や、自動更新通知機能などがあるため、最新の状態を保つのが容易である点です。
近年のライセンス管理ツールには、コストの可視化に役立つレポート機能も実装されています。部署別のライセンス使用状況や、ソフトウェアごとの年間コストをグラフやレポートで確認できるため、経営判断に必要なデータを迅速に提供できます。
クラウドサービスで一元管理する
クラウド型のライセンス管理サービスを利用すると、さらに利便性が向上します。
クラウド型の最大の特徴は、インターネット環境があればどこからでもアクセスできる点です。遠隔地にある本社と支社、あるいはリモート勤務をする担当者で、社内ネットワークがなくてもそれぞれの場所で管理業務を進められます。
データは自動的にクラウド上でバックアップされるため、パソコンの故障や災害時にもライセンス情報が失われる心配がありません。データ保護の観点からも、クラウドサービスの活用は有効な選択肢です。
外部の専門家やサービスに任せる
社内にIT担当者がいない、あるいは人手が不足している中小企業では、IT担当者代行サービスの活用も有効な選択肢です。
専門知識を持つプロに管理を任せることで、ライセンス契約の複雑な条件を正しく理解し、適切な運用が実現します。とくに、ボリュームライセンス(大量導入を前提とした契約種別)や複雑なサブスクリプション契約の管理には、管理効率化のための経験と知識が問われるため、社内で管理する場合でも外部の専門家に事前相談しておくと安心です。
さらに、定期的な最適化提案によってコスト削減効果も期待できます。使用状況を分析した上で、「このライセンスは不要」「このプランに変更すると安くなる」といった具体的な提案を受けられるため、継続的な改善が進みます。
中小企業の情シス・IT部門をアウトソーシングするメリットと成功のポイント
アカウント管理も併せて行うことの重要性
ライセンス管理と並んで、アカウント管理も企業のITセキュリティと業務効率化に欠かせない取り組みです。両者を連携させることで、より強固な管理体制を構築できます。
アカウント管理とは何か
アカウント管理とは、すでに触れたとおり、社内の各従業員がシステムやサービスを利用するときの「ログインするための情報」と「利用できる範囲」を記録・運用する業務です。
アカウント管理の基本原則としては、次のようなものがあります。
- 従業員それぞれに固有のアカウントを発行する
- 業務利用の範囲を超えた権限を与えない(最小権限の法則)
- パスワードの強度を保つためルール設定し、定期的な変更をうながす
管理業務において、保有ライセンスとアカウントは一体の関係です。
ライセンスの状況は、発行できるアカウントの数と権限、使用できるソフトウェアのバージョン・機能・決定する要素です。反対に、必要なアカウントの種類や権限は、ライセンスの種類や契約プランで決まります。
セキュリティ対策としてのアカウント管理の効果
アカウント管理を適切に行うことで、さまざまなセキュリティリスクを低減できます。
まず、情報漏洩リスクの防止に大きな効果があります。退職者のアカウントが放置されたり、必要なアカウントでもパスワードの定期変更がなされなかったりすると、本人や第三者がそのアカウントを悪用して機密情報にアクセスする危険性があります。
社内の不正アクセス対策のうえでもアカウント管理は必要です。必要最小限の権限を設定することで、内部から社外に情報を持ち出されたり、望ましくない利用方法によって外部から攻撃を受けたりする可能性をなくせます。
中小企業のセキュリティ課題とは?現状から解決策まで徹底解説
ライセンスとアカウントを管理上連携させる方法の例
ライセンス管理とアカウント管理を別々に行うのではなく、次のような方法で連携させましょう。入社・退社時に必要な周辺業務の効率化や、管理台帳の更新スケジュールのシンプル化にも役立つはずです。
- ライセンス付与時に同時にアカウントを発行する
- 退職者のライセンス回収とアカウント削除も同時に行う
- 管理台帳にライセンスとアカウント情報を紐づけて記録する
- 定期的な棚卸しで、不要なアカウントも同時に確認する
- 権限レベルとライセンス種別の対応関係を台帳であきらかにする
ライセンス管理でコストカットしながら業務停止リスクを回避しよう
ライセンス管理は、コスト削減とリスク回避のための大切な取り組みです。ライセンス形態の種類を理解したうえで「契約を更新する時期の管理」を中心とするさまざまな情報を、効率よく、シンプルな方法で管理できるようにしましょう。
「社内にIT担当者がいない」「ライセンス管理に時間を割けない」といった課題を抱える中小企業の方は、タスネットのオフィスITサポートサービスをご検討ください。IT担当者の代行として、ライセンス管理をはじめとする社内のIT環境整備を包括的にサポートいたします。
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